民泊新法が施行されてしばらく経過しますが、いまだに民泊新法と旅館業との違いが分かりずらいといったお声をいただくことが多々あります。 実際両者の違いってなんでしょう?
180日か365日かという宿泊可能期間、住居地域での営業、用途変更の問題…と挙げると沢山あるのですが、 今回は民泊新法の大前提の考え方でもある「居住」要件について解説したいと思います。
まず住宅宿泊事業の届出を行う住宅は、次のいずれかに該当する家屋である必要があります。
「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」
「入居者の募集が行われている家屋」
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」
目次
「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」の考え方
「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、実際に住んで生活している状態「特定の者の生活が継続して営まれている家屋」のことです。
「生活が継続して営まれている」とは、短期的に当該家屋を使用する場合は該当しないとのこと。通常は住民票をおいて生活している住宅になると思います。
「入居者の募集が行われている家屋」の考え方
「入居者の募集が行われている家屋」とは、住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋です。 ただし、広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載している等、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」とは認められません。
「実際に売りに出されている売却予定の物件」や人が住む目的(テナントや倉庫はNG)での「入居者募集中の物件」という意味になります。
意図的に借り手がつかないような高額な賃料や売価に設定した物件はNGになります。
つまり、売買・賃貸が行われるまで民泊を行う等の穴埋め的な利用ケースになります。申請時に添付書類に入居者募集のチラシなどが必要となります。
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」の考え方
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、生活の本拠としては使用されていないものの、その所有者等により随時居住利用されている家屋です。 当該家屋は、既存の家屋において、その所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用している家屋であり、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは、これには該当しません。
(随時居住の用に供されている家屋の具体例) 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋 休日のみ生活しているセカンドハウス 転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住するために所有している空き家 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住することを予定している空き家生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家
別荘やセカンドハウス、相続物件など時々利用するものの常時住んでいるわけではない物件の利用のケースが該当します。
私が申請した中でも最も多いケースで、地方の相続物件の活用は空き家問題の解消にも役立つのではないかと思っております。
申請時に居住(利用)を証明する資料が必要となります。(近隣での生活用品購入のレシート、往復航空券の写しなど)
新築物件での民泊はNGなのか?
結論として「新築投資用目的のマンション」は民泊利用ができません。その点、新築して始めることも多い旅館業との明確な違いを感じます。
ここでは新築物件での民泊が一律できないなわけでなく、あくまで民泊投資用として購入して一度も所有者等が居住したことのない物件では認めませんという趣旨になります。
新築物件の別荘(セカンドハウス)を購入したが、使わない間民泊として貸し出すという場合は今までの経験上問題ないです。
まとめ
- 民泊新法(住宅宿泊事業法)での届出要件として居住要件がある。
- 居住要件は3パターンのどれかに該当する必要があり、それぞれ添付資料が異なる。
- 旅館業との違いは「住居」として利用されている物件の有効活用にある。
- 新築物件での届出は注意が必要。